

「家は買わないほうがいい」
最近、そんな言葉をよく聞くようになりました。
住宅価格は高騰している。
建築費も上がっている。
住宅ローン金利も以前のような超低金利ではなくなってきた。
人口は減少している。
これから空き家も増えていく。
だったら、
「無理して家なんて買わず、賃貸でいい」
そう考えるのも、決しておかしなことではありません。
むしろ、今の時代に新築住宅を購入することは、以前より難しくなっています。
土地も高い。
建物も高い。
設備も高い。
断熱性能や耐震性能など、住宅に求められる性能も上がっている。
結果として、
「普通の家を買おうと思ったら、普通の価格では買えない」
そんな時代になりつつあります。
では、家を買わない。
ずっと賃貸で暮らす。
これは本当に「安心」なのでしょうか?
僕は、ここを一度立ち止まって考える必要があると思っています。
なぜなら、
現役時代の家賃と、定年後の家賃は意味がまったく違うからです。
賃貸住宅なら、住宅ローンを抱える必要はありません。
固定資産税も基本的にはありません。
建物の大規模な修繕についても、所有者側が対応します。
引っ越したければ引っ越せる。
家族構成が変われば、広さを変えられる。
これは賃貸の大きなメリットです。
だから、
「賃貸のほうが身軽」
という考え方は、十分理解できます。
問題は、その先です。
30代、40代、50代の間はいい。
働いているからです。
毎月給料が入ってくる。
家賃を払っても、生活費を確保できる。
しかし、
60代、70代、80代になったときはどうでしょうか?
ここが、僕が「家を買わない」という選択について一番考えてほしいところです。
住宅ローンは、基本的に完済すれば終わります。
もちろん、固定資産税や修繕費などは残ります。
でも、
住宅ローンという大きな固定費は消すことができます。
一方、賃貸はどうでしょう。
住み続ける限り、
家賃が発生します。
毎月。
毎年。
10年後も。
20年後も。
そして、老後になっても。
たとえば家賃8万円なら、
年間96万円。
20年間で1,920万円。
家賃10万円なら、
年間120万円。
20年間で2,400万円。
もちろん実際には更新料や管理費、引っ越し費用、家賃の変動などもあります。
逆に、持ち家にも固定資産税や修繕費がかかります。
だから、
「賃貸は必ず得」
「持ち家は必ず得」
という単純な話ではありません。
重要なのは、
老後の住居費をどう設計するのか
です。
ここは、かなり現実的に考えたほうがいい。
現役時代は、
「月8万円くらいなら払える」
と思うかもしれません。
でも、定年後はどうでしょう。
収入が給与から年金中心に変わる。
医療費や介護費用が増える可能性もある。
食費や光熱費も必要。
車が必要な地域なら車の維持費もかかる。
住宅設備も古くなっていく。
そして、その中から毎月家賃を払う。
もちろん、十分な資産を築いている人なら問題ありません。
老後資金をしっかり準備している人なら、賃貸でもいい。
だから、
「賃貸だからダメ」という話ではありません。
問題は、
「なんとなく賃貸でいい」
という状態のまま、老後を迎えてしまうことです。
ここで、
「だったら家を買えばいいじゃないか」
となります。
しかし、ここにも大きな問題があります。
新築住宅が高すぎる。
これが今の住宅購入を難しくしています。
土地価格。
建築費。
人件費。
住宅設備。
断熱性能。
耐震性能。
省エネ性能。
あらゆるものが住宅価格に乗ってきます。
昔なら、
「新築一戸建てを買って、住宅ローンを払っていく」
という選択が、多くの家庭にとって現実的でした。
しかし今は、
「新築を買うことそのものが家計に大きな負担になる」
ケースが増えています。
特に、無理な住宅ローンを組んでまで新築を買うのはおすすめできません。
家を買った瞬間から、
住宅ローンに追われる。
これでは本末転倒です。
ここからが、僕が建築・リノベーションの仕事をしている立場から伝えたいことです。
僕はこれから、
中古住宅の価値がもっと見直されていく
と考えています。
理由は単純です。
人口が減っていくからです。
人口が減る。
世帯数もいずれ減っていく。
一方で、すでに建っている住宅は大量に存在する。
つまり、
「家が余ってくる」
ということです。
今までなら、
「新築を建てる」
ことが当たり前だった地域でも、
これからは、
「すでにある住宅をどう活用するか」
が重要になってきます。
そして、中古住宅の中には、
「これはまだ十分使える」
という家がたくさんあります。
ここは非常に重要です。
僕は、
「安い中古住宅を買えばいい」
とは思っていません。
むしろ逆です。
中古住宅は、選び方がすべてです。
価格だけを見てはいけません。
見るべきなのは、
「家の骨格」です。
例えば、
・構造躯体の状態
・基礎
・雨漏りの有無
・シロアリ被害
・屋根の状態
・外壁の状態
・過去の修繕履歴
・間取り
・敷地条件
・周辺環境
こうした部分を確認する必要があります。
特に僕が注目したいのが、
しっかりした構造躯体を持つ中古住宅です。
そして、屋根についても、
瓦屋根など、適切に維持されてきた住宅には大きな可能性があります。
古いからダメ。
新しいから良い。
そんな単純なものではありません。
中古住宅の最大の弱点。
それは、
断熱性能です。
昔の住宅は、現在の住宅ほど断熱性能が高くないケースが多い。
窓も同じです。
昔の単板ガラス。
古いアルミサッシ。
これでは、冬は寒い。
夏は暑い。
冷暖房費もかかる。
結露の問題も出てくる。
だからこそ、
中古住宅をそのまま使うのではなく、
性能向上リノベーションをする。
ここに大きな可能性があります。
例えば、
構造躯体がしっかりしている。
立地がいい。
土地の条件も悪くない。
屋根もしっかりしている。
でも、
「寒い」
「暑い」
「間取りが古い」
「窓が弱い」
という家がある。
こういう住宅なら、
家そのものを捨てる必要はありません。
中身を現代の暮らしに合わせてアップデートする。
これが性能向上リノベーションです。
まず大切なのが断熱です。
壁。
天井。
床。
住宅全体の断熱性能を高める。
ただし、
「断熱材を入れれば終わり」
ではありません。
どこから熱が逃げているのか。
どこから熱が入ってくるのか。
住宅全体を考える必要があります。
そして、断熱とセットで考えたいのが、
窓です。
せっかく壁の断熱性能を高めても、
窓が昔のままだったら、住宅性能を十分に引き上げることはできません。
だから、
断熱改修+サッシ改修。
この組み合わせが重要です。
冬の冷気。
夏の熱気。
結露。
冷暖房効率。
窓を変えるだけでも、暮らしの体感は大きく変わります。
「中古住宅だから寒い」
ではなく、
「中古住宅を現代の断熱性能に近づける」
という発想です。
中古住宅のもう一つの魅力。
それが、
間取りを変えられることです。
特に僕が注目したいのが、
「将来、平屋のように暮らせる間取り」
です。
若いうちは、
2階に寝室があってもいい。
子ども部屋も必要でしょう。
でも、20年後、30年後はどうでしょうか。
階段を毎日上り下りする生活が、本当に必要でしょうか。
だからリノベーションの段階で、
「将来は1階だけで生活できる」
間取りにしておく。
寝室。
トイレ。
洗面。
浴室。
LDK。
これらを1階にまとめる。
そうすれば、
2階を使わなくても暮らせる家
をつくることができます。
これは老後の住みやすさという意味でも、非常に大きいと思います。
これからの住宅購入は、
「新築か賃貸か」
だけではありません。
第三の選択肢があります。
それが、
中古住宅を買って、性能向上リノベーションする。
という方法です。
例えば、
「構造は残す」
「屋根も活かす」
「使えるものは使う」
その一方で、
「断熱はやり直す」
「窓は交換する」
「間取りは現代の生活に合わせる」
「設備も更新する」
「必要な耐震改修をする」
こうすることで、
古い家を、新しい暮らしに合わせて再生する。
これは単なる「リフォーム」ではありません。
僕は、
住宅の再生
だと思っています。
ここも誤解してほしくありません。
性能向上リノベーションなら、
「中古住宅だから激安」
になるわけではありません。
むしろ、
断熱。
サッシ。
耐震。
屋根。
外壁。
設備。
間取り変更。
など、本格的にやれば、それなりの費用はかかります。
場合によっては、かなり大きな金額になります。
しかし、
重要なのは「工事費だけ」ではありません。
土地代。
住宅取得費。
住宅の性能。
立地。
将来の暮らしやすさ。
これらを含めて考える必要があります。
住宅は、
「買った瞬間の価格」
だけで判断するものではありません。
例えば、
新築住宅を購入する。
土地を購入する。
建物を建てる。
住宅ローンを返済する。
さらに、将来的に修繕する。
一方、
良質な中古住宅を購入する。
必要な部分を性能向上リノベーションする。
住宅ローンを返済する。
そして、老後には住宅ローンを終わらせる。
どちらが得なのかは、家によって違います。
だから、
「新築だから正解」
でもなければ、
「中古だから正解」
でもありません。
その家が、30年後も価値を持っているか。
ここを考えるべきです。
僕が本当に怖いと思うのは、
「家を買わないこと」
そのものではありません。
怖いのは、
老後の住居費を何も考えないまま、時間だけが過ぎていくことです。
30歳なら、定年まで30年以上あります。
40歳なら20年以上。
50歳なら10年程度しかありません。
今は、
「まだ先の話」
と思っているかもしれません。
でも、
住宅ローンを組むのも、
住宅を買うのも、
リノベーションするのも、
基本的には現役時代です。
だからこそ、
今のうちに、
「老後、どこに住むのか」
を考えておく必要があります。
もちろん、
賃貸が必要な人もいます。
転勤が多い人。
仕事の場所が変わる人。
資産を住宅以外に集中したい人。
将来住む場所が決まっていない人。
こうした人にとって、賃貸は非常に合理的です。
だから、
「全員が家を買うべき」
とは思いません。
ただ、
「一生賃貸でいい」
と決めるなら、
そのための老後資金まで考えておくべきです。
家賃を払い続けるということは、
老後にも住宅費が残る
ということだからです。
人口が減っていく。
住宅が余っていく。
新築価格は高い。
そんな時代だからこそ、
僕は中古住宅に可能性があると思っています。
もちろん、すべての中古住宅ではありません。
大切なのは、
「良質な中古住宅を見抜くこと」
です。
構造躯体がしっかりしている。
雨漏りしていない。
シロアリ被害がない。
屋根の状態がいい。
立地がいい。
土地条件がいい。
そして、
「断熱・窓・間取りを改善できる」
住宅。
こういう家は、
これからもっと価値が見直されるのではないでしょうか。
住宅を見るとき、
「築何年ですか?」
と聞く人は多い。
もちろん築年数は重要です。
でも、それだけではありません。
大切なのは、
「どんな状態で、どんな性能を持ち、これからどう使えるのか」
です。
築40年でも、構造がしっかりしている家。
築30年でも、丁寧に維持されてきた家。
築50年でも、立地が良く、適切な改修ができる家。
こうした住宅には可能性があります。
逆に、
築浅でも、
雨漏り。
構造上の問題。
施工不良。
維持管理不足。
などがあれば、安心とは限りません。
これまで日本では、
「家を建てるなら新築」
という価値観が強くありました。
新築が一番。
中古は古い。
そんなイメージです。
しかし、これから人口が減少していけば、
その価値観も変わっていく可能性があります。
すでに存在している住宅を、
壊して捨てる。
そしてまた新しく建てる。
それだけが正解ではありません。
使える住宅を残し、
必要なところを直し、
性能を高め、
次の世代へ引き継いでいく。
そんな住宅の使い方が、もっと増えていい。
僕はそう思っています。
ここまで読んで、
「結局、家を買ったほうがいいの?」
と思ったかもしれません。
僕の答えは、
「人による」
です。
ただし、
一つだけ強く言いたい。
家を買わないという選択をするなら、老後の家賃まで含めて考えてほしい。
そして、
新築が高すぎるからといって、
「じゃあ家を買わない」
という二択にする必要もありません。
その間に、
「良質な中古住宅を買って、性能向上リノベーションする」
という選択肢があります。
これは、
「安い家を買う」
という話ではありません。
「使える住宅を見極めて、必要なところにお金をかける」
という考え方です。
構造はしっかりしたものを選ぶ。
屋根も状態の良いものを選ぶ。
必要なら耐震性能を高める。
断熱性能を高める。
サッシを交換する。
間取りを暮らしに合わせる。
将来は平屋のように暮らせるようにする。
そして、
「新築」というブランドではなく、
「30年後も暮らしやすい家」
をつくる。
僕はこれからの住宅購入では、
この考え方が非常に重要になると思っています。
最後に、もう一度。
「家を買わない」のがリスクなのではありません。
賃貸が悪いわけでもありません。
新築が悪いわけでもありません。
中古が正解というわけでもありません。
大切なのは、
自分が老後、どこで暮らし、その住居費をどうやって払っていくのか。
ここを考えることです。
現役時代に家賃を払う。
定年後も家賃を払う。
その先も家賃を払う。
その選択をするなら、それだけの資産形成が必要です。
一方で、
現役時代に住宅を取得し、
性能を高め、
暮らしやすい家にして、
住宅ローンを完済する。
そして老後は、
「住む場所がある」
という状態をつくる。
これは一つの大きな安心材料になります。
だから僕は、
これからの時代、
「新築を買う」ことよりも、
「良質な中古住宅を見つけて、性能向上リノベーションする」ことに大きな可能性がある
と考えています。
人口が減る。
住宅が余る。
新築は高くなる。
だからこそ、
「すでにある良い家を見つける」
という発想が重要になる。
家は、
新しく建てるだけが答えではありません。
残す。直す。性能を上げる。暮らしを変える。
これからの日本の住宅には、
そんな選択肢がもっと必要になると思います。
そして何より、
「老後、家賃をどうする?」
という問いを、
今のうちに一度考えてみてほしいと思います。
家を買うか、買わないか。
その答えを急ぐ必要はありません。
でも、
「老後の住まいをどうするか」だけは、先送りしないほうがいい。
僕ならその答えの一つとして、
「良質な中古住宅×性能向上リノベーション」
を真剣に検討します。