

先日、丹波へ器を買いに行ってきました。
器を選ぶとき、私はいつも想像します。
どんな料理を盛ろうか。その時のグラスは?
ワインをより楽しむためには、口当たりのよい薄づくりのガラスがいい。
色どりは? 明かりは? 香りや音楽は?
そんなふうに、一枚の器から食卓の情景が広がっていくのが好きです。

私が惹かれるのは、なるべく人の手の温度を感じるもの。
民芸の器や、作り手のストーリーが宿るものです。
窯元の方やギャラリーのオーナーとお話しする時間もまた、
その器が生まれる“背景の時間”に触れているようで、
とても豊かなひとときでした。

器をお迎えするということは、
その人の手仕事と時間を、自分の暮らしに取り入れること。
それは家づくりにも少し似ていると思います。
家をつくるときも、
どんな空気が流れていて、どんな音が響くのか。
どんな光が差し、どんな香りが漂うのか。
その空間で過ごす“時間の質”まで想像することが、
心地よい暮らしをつくる第一歩。

機能や性能だけでなく、
そこに流れるリズムや、季節ごとの香りを感じられるような家。
素材の手ざわりや、職人の手仕事が生きる家。
そんな空間で過ごす日々は、
まるで丹波の器のように、時とともに味わいを増していく気がします。
暮らしの中の小さな選択が、
日々の心地よさを静かに変えていく。
これからも、そんな“時間の積み重ね”を大切にしていきたいと思います。