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2025.10.21[ 中道 翔太 ]
「価格」ではなく「戦略」で建てる時代へ。インフレ2%と住宅業界の新常識

今後の住宅業界の「新築価格」はどこまで上がる?

2%インフレ時代の家づくりと、”なんとなくライフプラン”の危うさ。


「家を建てるなら今が最後のチャンスかもしれませんね」
——住宅営業の現場で、そんな言葉がよく聞かれるようになりました。

たしかに、住宅価格はここ数年で大きく変わりました。
・建材価格の上昇
・人件費の高騰
・物流コストの増加
そして何より「継続的なインフレ率2%」という国の経済方針。

もはや「建築費が下がる未来」を前提に家づくりを考えるのは、危険です。


■「新築3000万円の時代」は、終わりつつある

かつて「土地込みで3000万円台の新築」は、郊外なら手が届く現実的なラインでした。
しかし、現在では建物本体だけで3000万円前後というケースも珍しくありません。

理由は明確です。

  • 構造材の高騰:木材価格は2020年から比べて約1.5倍〜2倍。

  • 設備コストの上昇:給湯器や断熱窓などが1.2〜1.5倍。

  • 人件費の上昇:大工・設備・電気業者なども軒並み値上げ。

さらに2024年以降、**性能向上義務化(省エネ基準適合義務)**が本格化。
今後の新築は「断熱」「耐震」「太陽光」などを前提にした仕様でなければ建てられません。

つまり、最低限の性能でも2,500〜3,000万円台がボーダーライン。
少しでもデザイン性や暮らしの質を求めれば、3,500万〜4,000万円台が現実的な水準です。


■ライフプランは「資金計画」ではなく「生涯設計」へ

ここで問題になるのが「ライフプランの精度」です。
営業マンが「なんとなく」で作る資金計画書は、正直ほとんど意味を持ちません。

なぜなら、多くの場合——

  • 子どもの教育費が“平均値”でしか見積もられていない

  • 車の買い替えや保険料が考慮されていない

  • 老後資金を「年金でなんとかなる」としている

という“希望的観測プラン”になっているからです。

住宅ローンは35年。
今後の物価上昇率が年間2%続くと仮定すれば、生活コストは20年後に約1.5倍になります。

たとえば、今の月30万円の生活費が、将来45万円に。
ローン返済が固定でも、光熱費・食費・保険料・税金は確実に上がっていく。

つまり、「今ギリギリ払える」ローンは将来は払えなくなるリスクを抱えています。


■では、どこまでのライフプランをすべきか?

家づくりのライフプランは、**「返済可能額」ではなく「将来維持可能額」**で考えるのが鉄則です。

ポイントは以下の3つ。


① 教育費と老後費用の“重なる時期”を想定する

子どもが中学〜大学にかけて最も教育費がかかるのが、親の40〜50代。
ちょうどこの時期に老後資金づくりも始めなければなりません。

つまり、支出が最も重なる時期を基準に家計の限界を設定する
「ボーナス返済でなんとかなる」ではなく、「最悪ボーナスがなくても回る設計」にすることが重要です。


② “固定費の最小化”を家づくりで先に行う

家は「住むための箱」ではなく、「支出を減らすための装置」でもあります。
断熱・気密性能を上げれば、光熱費は年間10万円〜15万円下げられる
メンテナンスコストを抑える素材を選べば、20年後の修繕費が半減する

つまり、「高性能住宅=将来の支出を減らす投資」なのです。
性能向上リノベーションやZEH住宅が国から補助を受けられるのも、このためです。


③ “インフレ2%の未来”を前提にする

たとえば年収が今後2%ずつ上がるとしても、物価も2%上がるなら実質的な可処分所得は変わりません。
「ローン金利は今は低いから大丈夫」と思っていても、
今後金利上昇や再借り換えリスクが現実化する可能性もあります。

ライフプランは「最悪のシナリオでも生活が破綻しないか」で組み立てるのが基本です。


■「今建てるか、待つか?」の答えはこうなる

ここまでを踏まえると、
「価格が下がるまで待つ」という選択肢は、もはや現実的ではありません。

建築コストが下がることより、インフレによる生活コスト上昇の方が早いからです。
むしろ、「今」の方が金利が低く、建築補助金も充実しています。

大切なのは、“焦って建てる”のではなく、“戦略的に建てる”こと。

  • どんな暮らし方をしたいのか

  • どこまでの性能が必要か

  • 将来どんな支出が増えるか

この3点を整理し、ファイナンシャルプランナーと建築士の両面で設計するのが理想です。


■「なんとなく」ではなく、「数字で安心を買う」時代へ

家づくりは感情的な決断でありながら、冷静な数字が必要な投資でもあります。
多くの失敗は、「今の家賃と同じ返済額だから大丈夫」という“なんとなくプラン”から始まります。

しかし、今後の住宅価格は右肩上がり、生活コストも上昇
「インフレ2%」の時代において、資産価値のある家を持つことは最大の防衛策になります。


 まとめ

  • 新築は今後、建物本体3000〜4000万円台が当たり前に。

  • 「なんとなくライフプラン」では、将来破綻のリスクが高い。

  • インフレ2%時代の家づくりは、“支出を減らす性能”に投資することが鍵。

  • 建て時を決めるのは、「金額」ではなく「戦略」。


今後の家づくりは、
「建てる勇気」よりも「守る設計」が求められる時代です。

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