

家づくりを考え始めた人が、ほぼ必ず突き当たる問いがあります。
「この家、リノベーションと建て替え、どちらが正解なんだろう?」
多くの人は、インターネットで調べ、SNSを眺め、そして建築会社に相談します。
そして、こう聞きます。
・どちらが自分たちに合っていますか?
・結局、どちらの方が安いんですか?
――ですが、私はこの質問自体がナンセンスだと思っています。
なぜなら、世の中の建築会社のほとんどは、
リノベーション専門
新築専門
どちらか一方にしか対応していない会社だからです。
少し極端な例を出します。
無添加食品を専門に扱う会社に行って、
こう聞いたらどうでしょう。
「添加物って、身体に悪いんですか?」
その会社は、何と答えるでしょうか。
ほぼ間違いなく、
「もちろんです。だから私たちは無添加にこだわっています」
と答えるはずです。
では逆に、
大量生産・コスト重視の食品メーカーに同じ質問をしたら?
「国が認めた基準内であれば安全です」
「必要以上に気にする必要はありません」
そう答えるでしょう。
どちらが嘘をついているわけでもありません。
立っている場所が違うだけです。
この構造は、建築業界でもまったく同じです。
新築専門の会社に聞けば
→「リノベは見えないリスクが多い」「結局高くつく」
リノベ専門の会社に聞けば
→「建て替えは壊すだけでお金が消える」「もったいない」
どちらも、その会社のビジネスモデルとしては正しい。
ですが、それはあなたの人生にとっての正解とは限りません。
にもかかわらず、多くの人は、
「プロが言うんだから間違いないだろう」
と、そのまま信じてしまいます。
ここに、家づくり最大の落とし穴があります。
よくある質問のひとつが、
「結局、リノベと新築、どっちが安いんですか?」
この問いも、かなり危険です。
なぜなら、
同じ条件で比較されることが、ほぼ存在しないからです。
例えば、
リノベ:見た目はきれいだが断熱・耐震は最低限
新築:高性能・長期優良住宅・補助金対象
この2つを「金額」だけで比べるのは、フェアでしょうか?
逆に、
新築:最低限仕様・ローコスト
リノベ:構造補強・断熱フル改修・素材にこだわる
これも同様です。
価格だけを聞く人ほど、条件を見ていない。
そして条件を見ていない人ほど、完成後にこう言います。
「思っていたのと違った」
リノベーションか、新築か。
本当に考えるべきなのは、
何年住むつもりなのか
どんな暮らしをしたいのか
家に“資産性”を求めるのか
それとも“消費”と割り切るのか
こうした人生設計との相性です。
ですが、ここまで踏み込んだ話をしてくれる会社は、驚くほど少ない。
なぜなら、
そこまで話すと「自社の商品が合わない人」が出てくるからです。
ここで、はっきり言います。
ほとんどの建築会社は、
あなたの正解を探しているのではありません。
彼らが売っているのは、
自分たちが得意な工法
自分たちが回しやすい仕事
自分たちが利益を出しやすい選択肢
です。
それ自体が悪いわけではありません。
会社とは、そういうものだからです。
問題は、
それをあなたが「絶対的な正解」だと信じてしまうこと。
「リノベーション or 建て替え・新築」
この問いに、万人共通の正解はありません。
あるのは、
あなたの家の状態
あなたの家族構成
あなたの将来設計
あなたの価値観
これらを踏まえた上での、その人にとっての最適解だけです。
そして、その最適解は、
一社の意見だけでは、絶対に見えてこない。
まず最初に、はっきりさせておきたいことがあります。
すべての家が、リノベーションに向いているわけではありません。
これは、リノベ専門会社でも、なかなか口にしたがらない事実です。
リノベーションが本領を発揮するのは、次のようなケースです。
構造体(基礎・柱・梁)が健全
雨漏り・白蟻被害が限定的、もしくは修復可能
間取り変更の自由度が高い
土地条件が良く、建て替え制限が厳しい
こうした家は、「骨がいい」状態です。
人で言えば、内臓と骨格が健康な状態。
見た目が古くても、
中身さえしっかりしていれば、暮らしは大きく変えられます。
逆に、注意が必要なのは以下です。
基礎に大きなクラックや不同沈下がある
構造計算が成立しない
雨漏りが長期間放置されていた
増改築を繰り返し、構造が破綻している
こうした家は、
直すほどにお金が吸い込まれていく可能性があります。
にもかかわらず、
「壊して捨てるなんて、もったいないですよ」
と背中を押されるケースも少なくありません。
ですが本当に“もったいない”のは、
不安を抱えたまま住み続けることではないでしょうか。
建て替え=悪
リノベ=正義
そんな単純な話ではありません。
むしろ、迷わず建て替えを選ぶべき条件も存在します。
構造的な欠陥が致命的
法規制が大きく変わり、再生が難しい
耐震・断熱を“最低限”ではなく“本気”で求めたい
今後40〜50年住む前提
これらに当てはまるなら、
無理なリノベより、新築の方がトータルで合理的な場合が多い。
にもかかわらず、
「リノベの方が安いですよ」
「思い出を残せますよ」
という言葉だけで決めてしまうと、
後から性能・光熱費・メンテナンスで差が出ます。
ここが、最も重要なポイントです。
多くの比較は、
初期費用
見た目
坪単価
に集中します。
しかし、本当に見るべきはそこではありません。
30年後、40年後のメンテナンス費
光熱費の差
住み替え・売却時の価値
心理的な安心感
これらを含めた人生全体のコストです。
例えば、
最初は500万円安く見えたリノベが、
20年でそれ以上の差を生むことも珍しくありません。
逆に、
性能を割り切った新築が、
将来の負担になるケースもあります。
少し厳しい言い方をします。
「結局どっちが正解なんですか?」
この質問を繰り返す人ほど、
家づくりで後悔しやすい傾向があります。
なぜなら、
その問いは思考停止のサインだからです。
本来は、
自分たちはどう生きたいのか
何を優先し、何を捨てるのか
そこから逆算して、
「だから今回はリノベ」「だから今回は建て替え」
と決まるもの。
答えは、外にはありません。
もし、これから家づくりを考えるなら、
最低限、次のことはやってください。
新築専門・リノベ専門、両方に話を聞く
メリットだけでなく、デメリットを先に聞く
「できない理由」を説明できるかを見る
即決を迫る会社からは、一度距離を置く
特に重要なのは、
「それはできません」と言える会社かどうか。
売りたい会社ほど、
何でも「できます」と言います。
本当に信用できるのは、
やらない選択肢も提示できる会社です。
リノベーションか、新築か。
その問い自体が、間違っているわけではありません。
ただし、
「誰に聞くか」
「何を基準に比べるか」
これを間違えると、
家づくりは一気に苦い経験になります。
正解は、
商品でも、工法でも、価格表の中にもありません。
あなたの人生の中にあります。
その視点を持てたとき、
初めて「リノベ or 新築」という二択は、
正しい問いに変わるのです。