I Style Quality～自然素材～ 微生物

現代社会では菌の事を聞けば汚いもの不衛生なものと位置づけられている氣がします。

テレビのCMでは台所の机の上、洗濯物、外から帰ってきた家族の歩いた足跡など菌がうじゃうじゃしていて、これらを除菌する商品が大々的に宣伝され売られています。そんなCMを見て菌は汚くて不衛生で取り除かなければいけないものと思っている人も沢山いるのではないでしょうか。

除菌、滅菌、殺菌という言葉をいたる所で目にしますが、それは正しいとは思わないのです。

そもそも空気中、川や海、土の中にも菌は数え切れないほどいて、地球は菌で覆われていると言っても過言ではない。人間に必要な空気も水も農作物も菌がいなければ成り立ちません。人間にしてもそうです。皮膚の上だけでも表皮ブドウ球菌が1兆個も存在し、腸の中にも100兆個以上の菌が存在していると言われている。鼻や口、人間の体のいたるところに菌が存在していて、我々が健康に生活するサポートをしてくれています。

菌なくしては人間は生きていけない存在なのです。

それにも関わらず菌を悪者にし排除しようとしている現代人は自分たちの首を絞めているようなものではないでしょうか。

私たちの祖先は菌が大切な事をよく知っていました。人間の健康をサポートし、地球の環境を整えてくれる菌と上手に付き合い共に生きていたのです。

髪を洗うときは米のとぎ汁で洗いました。これは乳酸菌を髪に付けて汚れや皮脂やふけを菌の力で分解してもらいました。肥溜めには稲刈り後のワラを入れ、ワラに付着している菌の力で排泄物を分解してもらい畑の肥料にしていました。冷蔵庫のない時代には菌の力で保存食を作りました。納豆、ぬか漬け、漬物、塩麹、干物、鰹節、昆布、醤油、みりん、味噌などなど数え上げればきりがありません。これらの食べ物は保存に優れているだけではありません。これらを食べる事によって体の中に菌を取り入れていたのです。菌を体に取り入れることによって健康をサポートしてもらっていたのです。

お酒も昔は「百薬の長」と呼ばれていた時代がありました。それはお酒の中に菌が生きていて人間の体にいい働きをしてくれていたからです。菌が生きているお酒は頭が痛くなったり、二日酔いなどもしません。どぶろくが家庭で作る事が出来るようになれば人は健康になり日本の医療費も下げる事ができると言っている方もいます。

山、畑、水田、川、池、海も菌が働きやすい状態だった為、汚染物質などは分解され、良い環境に保たれていました。その良い環境はきれいな水を潤わせ、栄養たっぷりの農作物、健康な家畜を育て、やがて人間にまた戻ってくるという自然のサイクルを作っていたのです。

しかし、菌の存在を悪者にし共に生きていく事を忘れてしまった現代社会ではどうでしょう？

髪を洗うシャンプーは髪の毛や頭皮にいる菌を殺してしまいます。肥溜めはうじ虫を殺す殺虫剤、掃除に強烈な洗浄剤を使うことで菌は死に分解もされないままで回収され、肥料にもならないばかりかその分、下水処理のコストがかかります。農作物には農薬や化学肥料を施し菌は働けない。市販されている保存食にはたっぷりと食品添加物が入っていて、菌の働きが期待できません。お酒も効率化、製造コストの削減の為に、製造過程で薬剤を投入したり、品質を均一にする為に加熱処理や殺菌処理をしています。

人間の体は菌だらけと言っても過言ではないのに菌を殺したり働きを阻害していたのでは免疫力は下がる一方です。川や池や海も菌が十分に働けない事で汚染物質や薬剤や農薬は分解されず巡り巡って必ず人間に戻ってきます。

全て昔のように戻そうと言っているのではありません。

菌を知る事でシャンプーを選ぶ時には成分を良く見て自分の体にも環境にも悪影響を与えないシャンプーが選べると思います。米のとぎ汁を使っていた話からは今、忘れられている無駄をなくす心を学べると思います。保存食や醤油、みりん、味噌も添加物を使っていない菌の生きた物を選ぶ事で免疫力を上げる事ができます。添加物を一切使わず昔ながらの伝統的な製法で一途に作っておられるお店もあります。肥溜めの話も、菌の力で排泄物が分解され、肥料になり、それが農作物の栄養となり、それを食べる人間の栄養となり、また人間の体内で菌により分解され、また排泄されという小さな自然のサイクルを学ぶ事ができます。人間も自然のサイクルの一員なんだと実感できます。

菌は目には見えません。しかし目に見えない事が重要なのです。

私達は今、目に見えている事にさえ目をつぶって見えないふりをしています。

環境汚染、自然破壊、放射能汚染水の垂れ流し、私たち人間がまいた種は必ず私たち自身で刈り取らねばならないのです。それが自然のサイクルです。

菌が働きやすく生きやすい地球と言うのは植物、動物、人間にとっても住みやすい地球です。

自然は正直です。私達が良い種をまけば綺麗で住みやすい地球という花を咲かせてくれます。

菌の事を見直し、学び、共に付き合う事が出来れば、菌だけでなく植物、動物、人間、全ての生き物が共存共栄できます。

除菌、滅菌、殺菌よりも食菌、着菌、活菌

金より菌！

優しい地球にしていきたいと考えています。

※ケセラセラジャーナルに寄稿した杉山孔太さんの記事より